中古車を選ぶ時、皆さんは何を基準に車を選んでいますか?
車の大きさ、走行距離、キズやへこみの少なさ、燃費、室内の広さ等々人によっていろいろなこだわりがあると思います。
しかし、中古車購入でよくあるケースですが、『すごくキレイな車を買ったはずなのに、あちこちから変な音がしている!』『真っ直ぐ走ってくれなくて飛んで行ってしまいそう!』というトラブルを耳にしたことがある方もいらっしゃると思います。
その原因の一つに『車の足回り』に関するトラブルが発生しているケースがあります。
外観上ですぐに見える部分は買う前によく確認しますが、車の内部になるとあまり詳しい知識がなく、確認していないという場合も多いのではないでしょうか。
特に、昨今増えてきている個人売買で車を購入するといった場合、トラブルになる可能性が高いです。
今回は、中古車購入後にトラブルになりやすい足回りのチェックポイントをご紹介します。
よく聞くクルマの「足回り」ってなに?
車の足回りとは、人や荷物が乗る部分の『ボディ』を支えてくれる部品で、人間でいうところの足腰に相当します。
その足腰を担う部品は、サスペンション、サスペンションアーム、ショックアブソーバ、スタビライザー、ステアリングロッド、ドライブシャフトなど他にも沢山の部品にて構成されています。
人間でもそうですが、足腰の調子が悪かったりすると、重い物を持ったり歩く際に痛みが出るなどの症状が発生します。
自動車も走行距離を重ねて行くごとに、足回りにダメージが蓄積されると、劣化や故障を起こし、正常な機能や走行が出来なくなってしまう恐れがあります。
足回りが悪い場合に起こること
足回りが劣化していたり、壊れてしまっていたりすると、『乗り心地が悪い』『真っ直ぐ走らない』など、車を快適に乗ることが出来ないばかりか、ひどい時は車を安全に走らせることが困難な場合があります。
一般道でも広い道では時速60km、高速道路では時速100km近いスピードで走る車がそのような状態では、事故の原因になりかねません。
特に中古車では、走行距離や年式が新しい場合でも、前のオーナーの使い方や整備の状況によっては、劣化が進んでしまっている場合があります。
足回りは外観から見て判断することは難しいので、可能であれば詳しい人と一緒に試乗させてもらい、疑問点はしっかりと原因を確認するようにしましょう。
購入時に確認したいポイント
では、購入時にどのようなポイントを確認すればよいでしょうか。
確認しておくべき主要なポイントと、劣化や不具合がある場合に起こる一般的な症状について解説します。
タイヤ
車と地面をつなぐ、唯一の部品がタイヤです。
『走る』、『止まる』、『曲がる』といった車の基本的な動き深く関わってくる重要な部品です。
タイヤは外観と製造年月をチェック
タイヤは常に紫外線や酸性雨にさらされていますので、これらによってゴムが徐々に劣化してきます。
劣化が進むとゴムの弾力性が無くなっていき、タイヤの表面にひび割れが出てくることがあります。
深いひび割れが多数ある場合はタイヤの劣化が進んでいます。
引用:ブリヂストン(https://tire.bridgestone.co.jp/
合わせてタイヤの製造年月を確認しましょう。
タイヤの側面をよく見ると『1220』などの4ケタの数字が書かれているはずです。
これはタイヤの製造年月を表す数字で、右側2ケタが西暦を表し、左側2ケタが製造された週を表しています。
『1220』であれば、2020年の12週に製造されたタイヤという意味です。
一般的には製造から5年以上が経つと自然劣化によってタイヤの弾力性が低下するため、溝が残っていても交換を検討した方が良いと言われています。
タイヤが劣化し弾力性が低下すると、乗り心地の低下、ロードノイズと呼ばれるタイヤの騒音増加、さらには雨の日にスリップしやすくなるなど、車の快適性や安全性能が失われていきます。
タイヤの残溝のチェック
タイヤが地面と直接接触する部分には、縦横たくさんの溝が彫られています。
この溝は主に3つの役割を持っています。
- タイヤと路面の間に入り込んだ水を排水する
- 駆動力、制動力(止まる力)の確保
- 車の安定性、タイヤの放熱性の確保
この溝は使っていくうちに、摩耗によって徐々に減っていきます。
乗用車の場合、法律では1.6mm以上溝が残っていないと公道を走ってはいけないことになっています。
しかしこれは本当に限界の数字で、溝が浅くなってくると、上記の性能が大幅に低下していきます。特に雨の日の排水性能が低下して、水を搔き出せなくなり、水にタイヤが浮いてしまいハンドルやブレーキが一切効かなくなる『ハイドロプレーニング現象』が発生しやすくなります。
安全に走行するためには最低でも3.0mm以上溝が残っていることが望ましいでしょう。
尚、新品のタイヤの場合、溝はおおよそ7~8mmの深さになっています。
タイヤの残溝を簡単に測る方法
今付いているタイヤが何mm残っているのか、見た目で正確に判断することは難しいですが、簡単に溝の深さを測定する方法があります。それは100円玉の『1』を下にして溝に差し込む方法です。
100円玉の外側から『1』の左側まではちょうど5mm、『1』の飛び出ている部分の端でちょうど4mmとなっています。
タイヤの溝に100円玉を差し込んだ時に、『1』が完全に見えてしまう場合は、残溝4mm以下ということになるので、一つの目安にしてみてください。
偏摩耗のチェック
引用:ブリヂストン(https://tire.bridgestone.co.jp/
偏摩耗とは、タイヤが均等に減らずに偏って摩耗している状態をいいます。
ミニバンなどの重い車は、カーブを曲がる際に遠心力でタイヤの外側に負荷がかかりやすく、外側が早く摩耗してしまう傾向があります。
また、空気圧が適切に調整されていなかったり、足回りをぶつけていて部品が曲がったまま走り続けてしまった場合などは、タイヤに負荷がかかって偏摩耗を起こしている場合が多いです。
ブレーキ
車の性能で一番重要なものが『止まる』ことです。
いかなる場合でも安全に止まれる車で無ければ、安心して乗ることはできません。
ブレーキも車の消耗品の一つで、徐々に摩耗が進んでいきます。
ブレーキローター・ブレーキパッドの摩耗チェック
ブレーキ周りで外側から目視で確認しやすいものとしては、ブレーキローターの摩耗があります。
ブレーキローターとは、ホイールの内側に見える金属の円盤の部品で、タイヤと同調して回転しています。
ブレーキペダルを踏むと、ブレーキパッドと呼ばれる摩擦材がブレーキローターを挟む形で押し付けられて、車を減速させます。
これらは使えば使うほど摩耗していくので、最終的には交換をする必要があります。
目視で分かる交換の目安として、ブレーキローターの淵に段付きが出来ている場合は、交換時期が近いと思って良いでしょう。
引用:DIXCEL(https://www.dixcel.co.jp/)
一般的にはフロント(前輪)側が片側1mm、リヤ(後輪)側が片側0.5mm摩耗すると使用限界とされていることが多いです。
距離にすると、一般的な使い方の場合で5~8万kmで寿命となる場合が多いです。
また、通常はブレーキローターよりもブレーキパッドの方が早く摩耗していくのですが、タイヤがついている状態では残量を目視で確認することは難しいです。
簡易的にチェックする方法としては、ブレーキオイル(フルード)の量を確認する方法があります。
ブレーキは油圧によって作動していて、ブレーキペダルを踏んだ力が、ブレーキオイルを介してブレーキパッドを押すことで作動します。
このブレーキパッドが摩耗してくると、摩耗した分だけブレーキオイルの見かけ上の量が減っていきます。
引用:日産自動車(https://www.nissan.co.jp/)
車のボンネットを開けて運転席のすぐ前にある写真のようなタンクが、ブレーキオイルのタンクです。
ブレーキパッドが減ってくると、このタンク内の油面が『MIN』と書いてある下側の線に近づいていきます。
ただし、これは簡易的なチェック方法なので、心配な場合はお店の方へ質問するようにしましょう。
サスペンション
サスペンションは路面から伝わる振動や衝撃を吸収して、乗り心地の向上や安定性を確保する部品です。
数々の部品から構成されていて、路面の凸凹に追従するために、走行中は絶えず動いて車への衝撃を吸収しています。
特に主要な部品であるショックアブソーバー(ダンパー)は劣化による車への影響が顕著に現れます。
ショックアブソーバーのへたり
サスペンションは、大きく分けてタイヤとボディをつなげている『アーム』類と、重さや衝撃を受け止める『スプリング』、スプリングの動きを抑える『ショックアブソーバー』で構成されています。
この内、ショックアブソーバーは中にオイルが封入されていて、走行距離を重ねていくうちにオイルの劣化や内部部品の摩耗によって、スプリングの動きを抑えられなくなってきます。
そうなると、段差を乗り越える時など、車がポヨンポヨンと弾んで収まりにくくなったり、カーブを曲がる時などもフラフラして車が安定しないといった症状が現れます。
一般的には走行距離5万kmくらいから劣化が感じられるようになり、8~10万kmで寿命を迎えると言われています。
距離を走った中古車を運転して感じる『ヤレ感』はこのショックアブソーバーのへたりから来ていることが多いです。
へたったショックアブソーバーを新品に交換するだけで、新車の感覚が戻ってくるとも言われています。
アライメント
アライメントは4つのタイヤがどのような向きで取り付けられているかを表すものです。
車は通常、個体差を埋めるために、タイヤの向きを調整する機構が備わっていて、車の特性に合わせて規定の角度が設定されています。
縁石にタイヤをぶつけてしまったり、事故に遭うなど、足回りに外部から強い衝撃が加わった場合、目視ではわからないレベルですが、このアライメントが狂ってしまう場合があります。
先程ご紹介したタイヤの偏摩耗と関係するので、これだけが原因ではないのですが、
『ハンドルは真っ直ぐなのに勝手に車が曲がっていく』あるいは『真っ直ぐ走る状態でハンドルがどちらかに傾いている』といった場合はアライメントが狂っている可能性があります。
また、衝撃によってサスペンションのアーム類が曲がってしまっている場合も上記の症状が現れます。
このまま乗り続けると燃費が悪くなったり、タイヤの偏摩耗の原因になります。
購入時に確認することは難しいケースが多いですが、購入後に上記のような異変を感じた場合はすぐにお店へ連絡するようにしましょう。
ブーツ類
足回りにはブッシュやジョイントと呼ばれるいろいろな向きに可動する部品が多数存在しています。
これらの部品には、可動部分を雨や埃から守るためにゴムのブーツが取り付けられており、ブーツの中には動きを良くする為にグリスが充填されています。
このブーツは年数が経ってくるとゴムの柔軟性が失われて、破れてしまう場合があります。
そうすると中のグリスが流れ出してしまい、部品の摩耗や異音の原因になります。
また、ブーツが破れている状態では車検を通すことが出来ません。
引用:グーネット(https://www.goo-net.com/)
距離を走った中古車で、一度も交換した履歴の無い車の場合は、ブーツ類の寿命が近づいている可能性があります。
足回り部品はほとんどが車検の検査項目です
2年に一度やって来る車検ですが、その検査項目のほとんどが足回りに関する項目と言っても過言ではありません。
アライメントのチェックに始まり、ブレーキの制動力チェック、アーム類が緩んでいないかのチェックなど、その車がしっかり曲がってしっかり止まることができるのか、国の基準に従ってチェックされます。極端な例ですが、エンジンが多少調子が悪かったり、外装がボロボロだったとしても、車検は通ってしまいます。
ですが、足回りに関しては、ブーツ一つ破れているだけで車検が不合格になってしまいます。
これは、足回りの状態というのは走行性能に直結していますので、自分のみならず歩行者や他の車に危険が及ばないようにするために行われますので当然と言えば当然です。
足回りの修理費用
足回りの不具合が車の走行性能や車検の合否に直結することは、もうお分かりいただけたかと思います。
では、足回りに不具合があった場合の修理費用はどのくらいかかるのでしょうか。
今回ご紹介した足回り部品のおおよその修理費用をご紹介します。
タイヤ:20,000円~200,000円(4本価格)
- 軽自動車(14インチ):約1万~3万
- コンパクトカー(15,16インチ):約5万~8万
- SUV,ミニバン(17インチ):約7万~10万
- スポーツカー(18,19インチ):約12万~20万
タイヤはメーカーやサイズによって大幅に価格が変わってくるため、交換費用も車によって差が出てきます。
複数のタイヤ屋さんに見積りを取ったり、ネットショップを使うのも、費用を抑える一つの方法です。
ブレーキローター:50,000円~100,000円(4輪交換)
こちらはブレーキローターのみの概算価格になります。
車格によってブレーキローターの大きさが異なるので、基本的に大きい車になればなるほど、交換費用は高額となります。
- ブレーキパッド:25,000円~74,000円(4輪交換)
- コンパクト~セダン:24,000~28,000円
- SUV~ミニバン:32,000~35,000円
- スポーツカー:50,000~75,000円
こちらはブレーキパッドのみの概算価格になります。
ブレーキローター同様に、車格に応じて値段は上がりますが、性能重視のスポーツカーなどは特に高額になってしまう場合があります。
ショックアブソーバー:70,000~100,000円(4本交換)
車種によって構造が異なり、純正品以外にもいろいろな種類が用意されているため、価格に幅がある傾向ですが、純正品や純正同等品を使った場合は7~10万円ほどになります。
アライメント調整:10,000~30,000円
車によって調整機構がついている数が異なり、その数によって工賃が変動します。
また、追加で加工や部品が必要な場合は、上記より費用が増える可能性があります。
ドライブシャフトブーツ:20,000円~25,000円(前輪2本)
ブーツ単体で部品が入手出来て、ドライブシャフト本体に異常がない場合は、ブーツ交換飲みで済みますが、ブーツが破れてからしばらく走ってしまったり、異音が出ていたりする場合はシャフトごと交換となり、さらに費用がかかる場合があります。
まとめ
いかがでしょうか。
今回は中古車を購入する時の足回りに関するチェックポイントと、修理費用についてご紹介しました。
中古車の足回りの状態によっては、購入後に高額修理が必要になってしまうことがあります。
販売店で購入する場合は遠慮なく不明点は質問して、不安な部分は納車時に整備してもらうなど、交渉してみるのも良いかもしれません。
また、中古車保証が付いてくる場合もありますので、購入してすぐに故障してしまった場合は、保証を使って修理を行う事もできると思います。
しかし、個人売買で購入した車や譲り受けた車などは、保証はなく現状引渡しが基本になるため、いきなり高額な修理費用が発生してしまう場合があります。
なので、個人売買で車を購入する際は足回りの確認と点検をしっかりと行う事で、致命的な故障の有無や、修理必要箇所の特定と予測を立てる事が出来ます。
せっかく購入した後に故障が見つかって「思いのほか高額になってしまい修理の資金がない」といった状況にならない様、車両のチェックを行う事が重要です。
車の個人売買を検討している方は、是非足回りのチェックを実践してみてください。
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