中古車は、どれも ”世界で1台だけ” あるいは ”同じ車は2台と無い”とよく言われます。
「この車に乗ってみたい」と思い、いわゆる ’車種’ を絞り込もうとしても、メーカー、車種、年式、グレード、ボディ色、内装色、オプション装備、社外用品、などの組み合わせがあり、これだけでもかなりの数になります。
中古車の場合、ここからさらに、車の状態が関わってきます。
走行距離、外装のキズや凹みの数、程度、内装のヨゴレやヘタレ具合、エンジンの調子や足廻りなどからの異音、ガタツキの有無、タイヤの溝の残り具合、そして事故の有無。
事故の程度も、エアバックが開くぐらいの大事故もあれば、バンパーのコスリキズ程度もあります。
ここ近年、大雨による災害も増えてますが、水に浸かった車かもしれません。
さらに言うと、今までのオーナーの乗り方もさまざまです。
決まった人1人しか乗っていない車、複数のオーナーが乗り継いだ車、社用車やレンタカーなど、複数の人が乗っていた車。
高速道路での移動がメインの車、都市部の渋滞道がメインの車、曲がりくねった山道や未舗装道路をよく走っていた車。
初心者が乗っていた車、お年寄りが乗っていた車、荒っぽい運転をする人が乗っていた車。
こまめに半年ごと点検、オイル交換をしていた車、車検もユーザー車検でろくに整備もせず、乗りっぱなしの車。
挙げればきりがないですが、今挙げただけの組み合わせだけ考えても、かなりの数になるのではないでしょうか?
査定が必要な理由
同じ車種でも、使われ方が変わると、状態が変わってきます。
それが、”中古車”というものなのです。
そこで、中古車を売る「販売店」も中古車を買う「お客さま=ユーザー」も、一台一台違う中古車の素性を明らかにするために [査定]が必要になってきます。
査定を行うことで、ユーザーはもちろん、販売店もメリットがあります。
ここでは、ごく簡単にメリットを挙げてみましょう。
ユーザーのメリット
査定のプロが基準に沿ってチェックするので、安心。(修復歴の有無など)
購入しようとする車両と、査定チェックシートなどとを見比べながら確認できるので、安心。
販売店のメリット
商談する際に査定チェックシートなどを提示することで、お客さまの安心感を得られる。
販売後、納車後に修復歴有無などに関するトラブルを未然に防ぐことができる。
査定証明書付きの商談、販売をアピールすることで、販売店の信頼度を上げることができる。
査定とは
中古車販売における[査定]とは、ユーザーから下取りや買取をする際、また、業者間で売買する際、中古車を適正に評価をして、金額を決定することをいいます。
したがって、[査定]のやり方や、基準などが決まっていないと販売店や営業マンごとに差が出てしまい、公平な判断ができません。
そこで、「日本自動車査定協会」が「中古自動車査定制度」を設け、これに賛同する自動車販売業者(査定業務実施店)とともに適正査定の浸透を目指しています。
また、「中古自動車査定士」という資格があり、「日本自動車査定協会」が実施する学科や実技の研修を受けて、査定士技能検定試験に合格したのち、査定協会に登録される必要があります。
つまり、この査定士が、ある中古車と、”標準の車両状態”を比較して、その中古車の状態を明らかにすること、また、「査定価格」を出すことを正確な意味としての[査定]といえます。
査定の方法
中古車販売店に展示されている中古車や、インターネットの中古車検索サイト、オークションサイトなどで、いわゆる ”〇〇鑑定書”というものを見たことがある方も多いと思います。
各社いろいろな様式がありますが、「日本自動車査定協会」の「カーチェックシート」の様式に従い、「中古自動車鑑定士」が査定したものが、ベースとなっています。
中古車の査定の方法について
査定では査定する中古車と、基準となる”標準の車両状態”とを比較します。
車両状態の基準について
”標準の車両状態”とは、次のように設定されています。
外装、内装は無傷であること
エンジン、足廻りは走行に支障なく良好であること
車検の残り月数は、3ヶ月以内であること
走行キロ数は、標準であること
タイヤの残り溝は、1.6mm(スリップサイン)以上あること
事故修復歴や、改造工作がなく、損傷減価要因(腐食、臭い)などが無いこと
例えば、
バンパーや、ドアなどの外装にこすってできたキズがあれば、減点されます。
エンジンから明らかに異音がする車は、減点されます。
車検が1年残っている車は、加点されます。
2年間乗った車の走行距離が5,000kmの場合、加点されます。
タイヤがすり減り、スリップサインが出ている車は、減点されます。
もちろん、修復歴有りの車は、大きく減点されます。
このような、さまざまな情報が、この「カーチェックシート」に記入されていきます。
この「カーチェックシート」の情報の中で、特に専門の「査定士」でないと見抜けないポイント(逆に言うと、一般のユーザーではわかりにくい部分)を取り上げていきます。
査定士が見るポイントについて
ポイントは大きく4点です。
外装
内装
エンジン等、機関類
フレーム
「査定士」が中古車のどこを見ているのか、どのように観察しているのかを簡単にお伝えします。
外装
車全体、あるいは、ドアやボンネット、屋根などのパネルごと、正面からだけでなく、斜めから見ていきます。
そうすることで、キズや凹み、塗装の状態がわかります。
板金塗装など、修理をしている車のパネルは、波を打ったように見えたり、塗装ムラがあったりします。
ホイールのガリキズやタイヤ溝のチェックをします。
フロントガラスなどへの飛び石によるキズや、割れが無いか確認します。
ここで、発見されたキズや、凹みの大きさ、深さ、塗装の状態を決められた記号や数字でチェックシートに記入していきます。(後ほど詳しく解説します。)
内装
フロントシート、リアシートの表面のスレ、へたり、タバコのコゲ穴の有無をチェックします。
天井のコゲ穴や、タバコのヤニの付着の有無をチェックします。
室内全体として、臭いやペットの毛などの付着がないか確認します。
エンジン等、機関類
ボンネットを開け、エンジンルームを観察します。
エンジンオイルなど各オイル類や、冷却水などの漏れがないか、確認します。
エンジンをかけ、異音がないか、また、エアコンの効きを確認します。
少し走行することで、オートマのシフトショックや、足廻りからの異音の有無を確認します。
フレーム
エンジンルーム内のネジ(各パネルや、フレーム類の接合部)の塗装の状態を見て、外された形跡がないか確認します。
エンジンルーム下(バンパー奥)やトランクのカーペットをはぐったパネル、ドアを開けてゴムを外し、ピラー部に修復の跡がないかなどチェックします。
このように、一般のユーザーがなかなか見れないところや、判断が難しいところを確認しています。
ここで得られた各情報を「カーチェックシート」にさまざまな記号、数字を用いて記入していきます。
記号(アルファベット)は状態を表し、数字で大きさや程度を表します。
カーチェックシートの見方
それでは、主なものを紹介していきましょう。
状態を表す記号
・A キズ(線キズ、スリキズ)
・U 凹み
・AU キズを伴う凹み
・P 変色、色あせ(塗装が必要)
・S サビ
・C 腐食
・T 割れ、穴
・W 塗装跡、板金修理跡(パネルが波打った状態)
・XM(XX) 交換跡
・M 修復歴
程度、大きさを表す数字
0 500円玉サイズ未満 : (修理しなくてもいい?というレベル)
1 カードサイズ(名刺サイズ)未満 : (目立ちにくいレベル)
2 A4サイズ未満 : (修理が必要というレベル)
3 A4サイズを超えたもの : (パネル全体的に修理もしくは交換が必要なレベル)
これらの組み合わせにより、例えば
A1 カードサイズ未満の線キズ(長さ2〜3cmの線キズ)
A2 (部位がガラスの場合)飛び石によるヒビや、ワイパー傷
U1 カードサイズ未満の凹み(駐車場隣りの車が開けたドアが当たってできた凹み)
AU2 A4サイズ未満のキズを伴う凹み(バンパー角をこすりながらへこましたキズ)
W3 板金修理跡(パネルが凹凸、パテ目など)が目立ち、再修理を要する状態
XM ドアパネルやフェンダーパネル交換
といったように、状態や程度がわかるようになっています。
さらに、これらの記号、数字をボディ展開図に記入することにより、
右フロントドアの下側に線キズがあるとか、リアハッチバックドアに凹みがあるといったように場所も特定できるようになります。
「鑑定書」のメリット
これまで、カーチェックシートの見方について解説してきました。
販売店の立場からいうと、このカーチェックシートを用いて、お客さまからの下取り金額を決めたり、仕入れの際の金額を算定するのに使います。
一方、中古車を購入しようとするユーザーの立場からすると、金額算定のプロセスはあまり関係ないので、中古車を購入する際に確認すべき点、あるいは注意すべき点を紹介していきます。
正直、このカーチェックシートそのものを見せられても、情報が多すぎて一般のユーザーにとっては非常にわかりにくいものとなっています。
そこで、販売店や、インターネット中古車検索サイトなどでは、独自の「鑑定書」を作成し、ユーザーにアピールしているところも少なくありません。
「鑑定書」の内容としては、車種、年式、走行距離、車台番号など、車を特定する情報と、車の程度を示すために、先程説明したキズや凹みなどがボディのどこにあるかを示す図があり、外装や内装などの程度を星の数などで表すなど、シンプルでわかりやすいものになっています。
この「鑑定書」のメリットを、ユーザー側、販売店側の両面から見ていきましょう。
[ユーザーのメリット]
専門知識がなければ見抜けない事故歴や修復歴が明らかになっている
資格を持った査定士が基準に沿って現車を確認した結果が記されているので、安心感がある。
「鑑定書」と実際の車の状態を照らし合わせることにより、キズや凹みなどを見落としにくい
漠然と展示車を眺めるよりも、具体的なキズなどの状態を把握し確認することで、納得した上で契約に望める。
遠方の販売店の展示車や、個人売買の車でも状態をイメージしやすい
キズや凹みなどの程度がイメージできれば、車を実際に見に行かなくても、車の状態がある程度わかるようになる。
[販売店のメリット]
商談時にユーザーの安心感につながる
実際の車と「鑑定書」を併用することで、ユーザーの理解度も増し、スムーズに商談を進めることができる。
販売後のトラブル防止になる
事故歴やキズの有無など、「鑑定書」が証拠となり、不毛な水掛け論に陥りにくい。
販売店の信頼性を上げることができる
資格を持った査定士による鑑定を行っているアピールができ、近隣ユーザーだけでなく遠方やインターネットを介した取引も有利になる。
ちなみに、一昔前まではよく改ざんの話を聞いた「走行距離」については、かなり、信頼性が上がってきたといえます。
一つは、車検証の欄外に、車検を受けた際の走行距離が記載されるようになったこと。
もう一つは、業者間同士で車を売買するオークション会場に出品された中古車の走行距離データーが集中管理されることで、過去に出品されたときの走行距離よりも少なく再出品されたことが発覚したら、’走行不明車’と烙印を押される。
これらのことにより、ユーザーはもちろん、車を仕入れる販売店としても安心できる材料だと思います。
万が一、購入した中古車の走行距離があやしい。とかメーターで示す距離よりも走行距離の多い記録簿などが出てきた。といった場合は、「走行メーター管理システム」でデーターをチェックしてもらうことも可能です。(手数料がかかります。)
車両査定に関しての注意すべき点
「鑑定書」「査定表」などを提示しない販売店
前述したメリットが全くなくなります。
業者間のオークションで仕入れた車であれば、各オークション会場の「査定表」あるいは「出品表」といわれるものがあります。
それを提示できないということは、都合の悪いことを隠しているともいえます。(すべてがそうとはいいませんが、最悪、ちょい事故車やちょい水没車など)
実際の車をしっかりと確認しましょう。
「鑑定書」の評価があいまい
キズや凹みなどの程度を判断する基準において、残念なことに査定をする人により”個人差”があるということです。
500円玉やA4シートなどの大きさ、範囲の基準はあるものの、微妙な大きさの場合、どうしても小さめに判断したり、同一パネル(例えば右フロントドア)に複数キズがある場合、全てを拾わず、大きなものだけを記入したりといったことがあります。
さらに、外装や内装などの総合評価の星の数での評価については、かなりあいまいな場合も少なくありません。
特に、細かいところまで気がつく性格の方は要注意だと思います。
まとめ
中古車を選ぶ基準や、信頼の拠り所となる「査定」について、解説してきました。
「査定表」(=「カーチェックシート」=「鑑定書」)を明示することは、ユーザーはもちろん、販売店(個人売買の場合、売り手)にとっても大きなメリットがあることはおわかりいただけたと思います。
「査定表」の見方をマスターすれば、極端な話、中古車そのものを見ることができなくても、インターネット経由や個人売買でも、安心して購入に踏み切れると思います。
中古車選びの幅を広げるためにも、ぜひ「査定表」をマスターしてみてください。
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