中古車販売店やオークションで販売されている車の中には、何かしらの理由でボディーパネルの補修いわゆる板金塗装された車両が多く出回ってます。
このサイトに訪れる方は、これから中古車を買おうとしている人や、
すでに買った中古車の板金の質が気になっている方が多いのではないでしょうか。
これから中古車を購入しようとしている方は、その他のチェックするべきポイントも押さえておきましょう。
一見キレイに整えられているものがほとんどですが、板金を行う業者は腕に差があるため、じっくりボディを見てみると色見が若干違かったり、一部分だけ質感が違うということが少なくありません。
「多少見た目が悪いくらいならいいか」と思う人もいるかもしれませんが、質の悪い塗装は劣化しやすく、サビの発生や色褪せ・剥がれの原因となることも。
そのため中古車を購入する際には、まずは板金の有無を確認し、板金が行われている車に関しては質を確かめておくことが長くキレイに車に乗るポイントとなります。
本記事では、質の良い板金と悪い板金の見分け方をご紹介します。
板金が行われた車は純正の車と比べて安く販売されているケースが多いため、質の良い板金を見分けることができればお得に良い中古車を手に入れることも可能なのでぜひ参考にしてください。
板金とは?
車に乗る人なら「板金」「板金塗装」という言葉を一度は聞いたことがあると思います。
しかし言葉は知っているけれど具体的にどんなものなのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
良い板金・悪い板金の見分け方をご紹介する前に、まずは板金とはどんな作業なのかについて簡単に解説します。
自動車業界で使われる「板金」とはパーツ交換なしで凹みやキズを直す修理方法のことです。
損傷してしまった箇所をハンマーで叩き出したり、引っ張ったりすることで可能な限り元の状態に戻し、最後に塗装を行います。バンパーなどの樹脂部分は研磨後にパテなどを施し元の形に整えて再塗装を行います。
腕の良い業者が板金を行うと、修復箇所が分からないほどキレイになりますが、業者の腕が悪いことや低予算で仕上げられた車の修復状態は悪い傾向にあり、損傷箇所が完全に元通りになっていない場合もあります。
板金を行う際にはキレイに仕上げるために純正の塗装を一度剥がし、修復後に再塗装を行うため、どうしても色むらや作業跡が残ったり、純正塗装との間に隙間が生まれサビや劣化の原因となったりするケースがあるからです。
そのため板金が行われた中古車の購入を検討する場合には、板金の質を見極めることが大切です。
板金の質の見分け方
板金は作業する業者によって仕上がりに差が出るため、同じ板金済み中古車でも修復した跡が分からないものもあれば、色味の違いやムラが目立つものもあります。
「多少色の違いやムラがあっても気にならない」という方もいるかもしれませんが、質の悪い板金は塗装劣化を早める原因になることがあるため注意が必要です。
板金の質を見分けるためには以下の7つの項目をチェックしてみてください。
・塗装の色味とツヤ
・塗装の凹凸やゆがみ
・塗装肌のざらつき
・パテ目
・マスキング跡
・パーツ内側の塗装処理
・パーツ同士の隙間
塗装の色味とツヤ
板金の質を見分けるためにまずはボディの色味とツヤを確認しましょう。
車の色は角度や光の当たり加減によって見え方が変わります。
そのため色味やツヤを確認する場合は、様々な角度や距離から車を見るようにしてください。
また可能であればペンライトなどを用意しましょう。
塗装面を照らしながらボディを確認すると、自然光では分からなかった色味やツヤ感の違いが分かりやすくなります。
質の良い板金業者は、元々の塗装の日焼け具合や劣化による変色も考慮して色あわせを行っているため、純正塗装と板金塗装の色味の違いはほとんど分からないでしょう。
しかし様々な角度や距離でボディを確認したときにボディの色に違和感を感じるようであれば、色あわせが雑に行われていることが考えられます。
車の塗装はどれだけ大切にしていても劣化してしまうものです。
購入時点から色に違いがある車は、時間の経過とともに色味の違いが大きくなる可能性も。
そのため板金済み車を購入する場合は、色味の違いがない塗装の質が良い車を選びましょう。
塗装の凹凸やゆがみ
塗装面には板金技術の質の差がが大きく現れます。
板金の質をチェックする場合には、塗装面に凹凸やゆがみがないか確認してみてください。
凹凸は目線とボディを平行に見たり、手で触れることで見つけることができます。盛り上がりや凹みがはっきりと分かる場合はあまり良い板金とはいえません。
ゆがみの確認はボディに写る景色で判断する方法がおすすめです。
白や色が薄いカラーの場合は周りの風景が反射しにくく、見分けることが難しいですが、黒や濃いカラーの車の場合には自分や周りの景色がクルマのボディーに写り込みます。
純正の塗装であれば写り込んだ風景にゆがみは生じません。
しかし板金を行った際の下地処理が甘かったり、塗料が均一になっていない場合にはボディー表面に凹凸が生じ反射する景色がゆがみます。
腕の良い板金業者であればゆがみの原因となる凹凸が発生しないよう、下地処理や塗装を丁寧に行うためゆがみはほとんど分からないでしょう。
塗装肌のざらつき
板金の質を判断する際には見た目だけではなく実際に塗装面を触ってみましょう。
業者によって板金作業を行う場所は様々で、屋内で空気中に含まれるホコリやゴミに気を遣って作業を行う業者もいれば、屋外で作業を行う業者も。
板金塗装を砂やホコリが舞い上がりやすい場所で行うと、塗装に異物を巻き込んでしまい、ざらつきやムラの原因となります。
新車を製造する工場でもゴミ噛みが発生することがあるほど異物の巻き込みによるムラは発生しやすいため、いくら腕が良い業者であっても完全にゴミ噛みがゼロというのは難しいものです。
この差も、塗装をする施工環境の違いにより起こる事ですので、専用の密閉ブース内で行われていない塗装=低価格の塗装業者=やっつけ仕事を疑っても良いかもしれません。
ボディ表面を触ってみたときにざらつきが少なく、なめらかになっていれば質のいい板金塗装が行われたと考えていいでしょう。
パテ目
「パテ目」がボディについているかどうかも確認してみてください。
「パテ目」とは塗装下地の凹凸が時間の経過とともに表面に浮き出てくる跡のことです。
板金を行う場合には、修理箇所の塗装を剥がし、叩き出しや引っ張りを行うことでできるだけ鉄を元の形状に戻します。
一度変形してしまった鉄は完全に元通りにはならず、そのまま塗装をすれば塗装に厚さの違いやムラができてしまうため、塗装前には「パテ」と呼ばれるペースト状の補修材で凹凸を埋め、補修材が乾燥した後にやすりで削ることで表面を平らにする作業を行います。
この工程は「サンディング」と呼ばれており、サンディングの後にはやすりで削った時に発生してしまった溝を埋めるために目の細かい下地材の「サフェーサー」を吹き付けます。
板金ではこのように丁寧に下地を整えてから塗装を行うことで、表面のムラやざらつきを防ぎますが、表面を平らに慣らす「サンディング」作業が甘く表面に凹凸ができたままになっていたり、「サフェーサー」の吹き付けが丁寧に行われず大きなサンディング跡が残った状態で塗装をした場合、作業完了直後は気にならなくても時間が経ち塗装が乾燥するにつれ下地に残った凹凸が浮き上がってきてしまうのです。
この作業跡のことを「パテ目」といい、板金から数カ月経った後に目立ちだすことも。
中古車として出回っている車は、販売直前に板金が行われたものも多く「購入時には気にならなかったのにしばらく経ってからパテ目が目立ってきた」というケースもあります。
購入時点でパテ目が気になる箇所があれば、より作業跡が目立ってくることも考えられますので、車両を選ぶ際にパテ目があるかどうか確認しておくことをおすすめします。
マスキング跡
きちんとした修理工場で行われた板金修理であれば、ここからご紹介するマスキング跡が残っていることはほとんどありませんが、損傷が軽微で当時の持ち主が自分で塗装を行った場合や、部品を外さず塗装を行わない補修など低価格な補修作業にマスキング跡が残っていることがあります。
「マスキング跡」とはその名の通り、塗装をする際に不要な部分まで塗料が付着しないように保護するためのマスキングテープを使うことでできてしまう凹凸のことです。
マスキング跡があると見栄えが悪いだけでなく、純正塗装と板金塗装との間にわずかな隙間ができてしまい、そこに雨や湿気によって水分が入り込むことでサビや塗装剥がれの原因になることがあります。
そのため、購入を検討する車にマスキング跡が残ってしまっているようであれば、質のいい板金とは言えないためおすすめはできません。
パーツ内側や隅の塗装処理
質のいい板金を見分けるためには、車の外側からだけでなくパーツの内側も確認してみてください。
質のいい板金業者は目に触れる場所だけでなく、ドアの内側や隅の塗装処理も怠りません。
もちろん、良い業者だからと言って塗装の必要がない裏側まですべて塗装を施しているわけではありませんが、ドアを開けたときにしか分からないパーツ内側の隅や際に凹凸があったり、純正塗装と後から行われた塗装で段差ができてしまっている場合は、あまり良い塗装とは言えません。
このような作業跡があると、先ほどご紹介したマスキング跡と同じく隙間から水分が入り込み、塗装劣化の原因となることも考えられます。
また塗装を行う際に一気に作業を終わらせようと塗料を厚塗りしてしまうと、塗料が垂れ、そのまま乾くことで凹凸ができる「塗装垂れ」ができることも。
プロの業者が行った板金であれば、車の表面にこの「塗装垂れ」が発生するケースは少ないですが、目につきにくい場所には塗装垂れによる凹凸が発生しやすいため、板金済車を購入する際には、パーツの内側も目で見て、手で触ることで確認することをおすすめします。
パーツ同士の隙間
軽微な修理では、パーツを取り外すことなく作業が行われる場合もありますが、損傷が大きい場合や広い範囲を塗装する際にはパーツを取り外して補修を行い、作業完了後に再度車体に取り付けます。
一度取り外したパーツを元通りに戻すことは技術レベルにより完成クオリティが変わるため、作業する業者によっては隣り合うパーツとの間にある隙間の幅が変わってしまったり、左右対称ではなくなってしまうことも。
板金の質を見分けるためには、様々な角度から車全体を見渡すことで、車そのものの形に違和感がないかも確認してみてください。
プロが行う板金では大きなズレが発生するケースは少ないですが、一目見て違和感を感じる程違いがある場合には車両の耐久性にも影響がでる可能性も考えられるため、あまりおすすめはできません。
車の個人売買では特に板金の有無や質に注意が必要
ディーラーや中古車販売店で販売されている車はプロによって査定が行われています。
そのため板金を行っている事を隠されたり、質の悪い板金が施された車を知らずに購入してしまうことは少ないですが、個人売買の場合は車を高く売るために売主が板金を隠しているケースが少なくありません。
また損傷個所が小さい場合にはプロに修理を依頼せず一般の方が板金や塗装を行っている車も多く、知識のない人が行った修理は塗装劣化のとなることも。
購入した車を長くキレイに乗るためにも個人売買で車の購入を検討している場合は、特に注意して板金の有無や実車を確認するようにしましょう。
まとめ
中古車販売店やオークションで販売されている車の中には板金が行われているものが多く出回っています。
「見た目がキレイに整っているならば問題ない」と考える方もいるかもしれませんが、質の悪い板金が施された車は、通常よりも塗装劣化が早く進みやすく、剥がれやサビの発生原因となることも。
そのため板金済みの車を購入する際には、板金の質を見極めることが大切です。
また板金が行われている車は、通常の相場よりも安く販売されているケースもあります。
板金の質を自分で見分けることができれば、質の悪い車を購入してしまう可能性が低くなるだけではなく、ほしい車をお得に手に入れることができるかもしれません。
中古車の購入を失敗しないためにもぜひご紹介した見極めポイントを参考にしてください。
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